2018年3月21日水曜日

カジノ、4カ所以上視野=地方配慮に軌道修正-与党協議で決着へ パチンコ業界とつながりの深い政治家たち

カジノ解禁に暗躍"パチンコ業界"の政治力

2018/3/20(火) 9:15配信



カジノを中核とする統合型リゾート(IR)の設置に向けた動きが加速している。推進派は「外国人のカネを呼び込む」と息巻くが、その背景には衰退が著しいパチンコ業界の暗躍がある。彼らは生き残りをかけて、自民党のみならず野党の政治家までも動かしているのだ。ジャーナリストの出井康博氏がリポートする――。(後編、全2回)

■本当にカジノで地方は活性化するのか

日本に当初誕生するカジノの数は、大阪など大都市に「2~3カ所」と想定されていた。しかし、その数が増える可能性が浮上している。2018年2月26日の『時事通信』電子版は、こう伝えている。

<カジノ、4カ所以上視野=地方配慮に軌道修正-与党協議で決着へ>

数を増やすのは「地方配慮」だというが、本当にカジノで地方は活性化するのだろうか。そもそも世論の過半数は反対だというのに、何のためにカジノはつくられ、誰が「得」をしようとしているのか――。

カジノ解禁が議論され始めた頃から、「カジノの収入は1.5兆円、経済効果は7兆円」といった話がまことしやかに流れた。出所となったのは外資系の投資銀行などである。そこに大手メディアが乗っかり、「日本、アジア第2のカジノ市場へ」(2016年12月4日付『日本経済新聞』電子版)といった具合にカジノ効果をあおった。

一方、推進派の政治家たちは、カジノによって「外国人観光客」が増えると強調していた。カジノ解禁が当初、2020年の東京オリンピックを意識して進められようとしたのも、外国人観光客との関係からだ。

しかし、いくら“普通”の観光客がカジノを訪れても大きな収入は見込めない。マカオやシンガポールで「カジノブーム」が起きたのは、マネーロンダリング(資金洗浄)目的の中国人VIPの存在があったからなのだ。(前編「外資カジノが“1兆円投資”を発表した思惑」参照)

■外国人観光客の3.5人に1人がカジノを訪れる?

では、投資銀行などは何を根拠として、日本のカジノが1兆円規模の市場となるといった話をしているのか。

米大手投資銀行「シティ・グループ」が2013年8月に発表したレポートがある。日本にカジノが誕生した場合の市場規模を予測したものだ。レポートは東京、大阪、沖縄の3カ所にカジノができると仮定したうえで、収入を「年134億ドル~150億ドル」(約1.4兆円~1.6兆円)と見積もっている。大手メディアを含めた推進派は、こうした数字を都合よく引用した。

ただし、レポートを詳細に読むと、推進派が触れない事実が多く見つかる。まず「150億ドル」の内訳だが、外国人客からの収入は約33億ドルに過ぎず、残りの8割近くは日本人客が想定されている。推進派は「1.5兆円」という数字は持ち出しても、外国人客からの収入が2割少々にすぎないという点には触れようとはしない。

しかも外国人が使うという「33億ドル」ですら極めて甘い試算だ。年830万人もの外国人がカジノで遊び、シンガポール並みに「1人400ドル(約4万2000円)」を負けてくれてやっと達成される。

▼大型カジノがあるシンガポールの「マリーナベイ・サンズ」。(写真=iStock.com/joyt)



訪日外国人数は急増が続いていて、2017年には2869万人に達した。「830万人」といえば、約3.5人に1人がカジノを訪れることになる。日本を訪れる外国人には、それほどギャンブル好きが多いのだろうか。シンガポールの「400ドル」という客単価にしろ、中国人VIPの存在があっての数字だ。中国人の少ないラスベガスの場合、客単価は150ドル程度まで低下する。

■パチンコ愛好者の平均負け額は「年23万円」

推進派が決まって日本版カジノのモデルに取り上げるのが「シンガポール」だ。

「シンガポールはカジノができたおかげで外国人観光客が急増した」

そんな声も彼らからよく聞かれる。確かに、シンガポールを訪れる外国人の数は、カジノ誕生の2010年を境に増加した。だが、その要因は何もカジノだけにとどまらない。増加の背景には、08年秋の「リーマン・ショック」で大幅に落ち込んだ外国人訪問者数の回復分も含まれる。

もともと推進派はシンガポールを例に取り、カジノが「外国人観光客2000万人」達成のための切り札になると主張していた。しかし、カジノなしでも「2000万人」は実現した。カジノ解禁が決まった現在では、もはや外国人観光客とカジノの関係すら口にしない。

シティ・グループは日本人が年117億ドル(約1.2兆円)をカジノで使うと想定するが、この試算もかなり甘い。670万人が訪れ、1人が平均17万円を負けてやっと実現する。これは日本に1230万人いるパチンコ愛好者の平均負け額が年23万円というデータに基づいている。

しかし、レポートがつくられた後、パチンコ愛好者は1000万人以下まで減っている。しかも全国に散らばる愛好者が、わざわざカジノまで出向き、20万円近い大金をスッてくれるだろうか。

■カジノ収入の「8割近く」は日本人の懐から

興味深いのは、シティ・グループが「パチンコ」を参考にして、日本のカジノ市場の規模を推計している点である。日本への参入を目指す外資系カジノ運営企業の狙いが、パチンコ市場の切り崩しであることを表している。

日本に誕生するカジノの運営は、外資系が担う可能性が極めて高い。そうなれば、収入のかなりの部分は外資系が持っていく。その「8割近く」は日本人客が落としたものだ。つまり、外国人のカネを狙うはずのカジノが、逆に外資系が日本人の富を吸い上げる装置となってしまうわけだ。

肝心の税収はどうか。政府は今年2月21日に開かれた自民党の会合で、日本人から2000円の入場税を徴収する一方で、運営業者には収入の一律30パーセント、もしくは30-50パーセントの累進課税を課す案を示した。入場税はシンガポールが自国民に課す「100シンガポールドル」(約8000円)よりもずっと低い。その一方、業者への課税率は、VIP収入に12パーセント、一般客からの収入に22パーセントを課税するシンガポールよりも高い。

「年1.5兆円」の収入に30パーセントを課税すれば、年4500億円の税収となる。加えて入場税も見込める。しかし「1.5兆円」はカジノ解禁をあおるためにつくられた数字で、極めて現実味に欠ける。収入が10分の1になれば、業者からの税収は450億円にしかならない。しかも「8割近く」の出所は、日本人の懐なのである。

また、カジノで負けが膨らめば、他の消費に回る金額が減る。そう考えれば、単純に税収が上積みされるわけでもない。

単に税収を増やしたいというのであれば、パチンコの換金に課税すればすむことだ。パチンコ業界は衰退が著しいとはいえ、20兆円を超える売り上げ(貸玉料)がある。1パーセントの税を課すだけで、2000億円の税収が得られるのである。

■パチンコ業界とつながりの深い政治家たち

国会でカジノ解禁の原動力となったのは、超党派の「国際観光産業振興議員連盟」(IR議連)だった。かつて安倍晋三首相も最高顧問を務めるなど、自民党と維新の会を中心に国会議員100名以上が名を連ねている。

IR議連には、パチンコ業界とつながりの深い政治家が少なくない。同議連幹事長の岩屋毅衆院議員(自民党)、同副会長の羽田雄一郎参院議員(民進党)、同事務局次長の馬場伸幸衆院議員(維新の会)らに加え、同元副会長の野田聖子・総務相らは皆、パチンコ・パチスロホールの業界団体「パチンコチェーンストア協会」の政治分野アドバイザーを努めている。

パチンコ業界は衰退が著しい。愛好者の減少が止まらず、1990年代半ばには全国で1万8000軒以上に上った店舗数も、1万1000軒を割り込む状況だ。そんななか、大手業者は「カジノ」に参入し、生き残りを図ろうとしているのだ。

カジノが「4カ所以上」となる可能性を『時事通信』が報じたのは、自民党内の議論を受けてのことだ。事実、同党検討部会を座長として率いる岩屋氏は、かつて「最終的には国内の10カ所程度にカジノを建設する」と述べている。

■日本は博打に未来を託す国に成り下がった

カジノの数が増えれば、外資系だけでなく日本企業にも参入の余地が生まれる。すでに海外でカジノ運営に携わる「ユニバーサルエンターテインメント」や「セガサミー」に加え、藤本達司社長がパチンコチェーンストア協会理事を務める「ダイナム」は16年、香港の子会社経由でマカオに現地法人を設立し、カジノ解禁に向けての準備も進めている。また、同協会代表理事・加藤英則氏が社長の「夢コーポレーション」は、ダイナムのグループ会社だ。

こうしたパチンコ業界の思惑が、カジノ解禁に大きく影響した。そこに外資系などの投資銀行が、根拠の乏しいレポートをつくって支援した。投資銀行にとっても、巨額の資金が必要となるカジノ建設はビジネスチャンスだ。つまり、日本におけるカジノ解禁は、外資系のカジノ運営業者や投資銀行、そしてパチンコ業界、さらには同業界と関係の深い政治家という推進派を形成し、実現に至ったわけである。いくら「反対」の世論が過半数を占めようと、野党議員にも推進派は多いのだから国民には成す術もない。

国土が狭く、他に産業の乏しいマカオやシンガポールが、なりふり構わずカジノで設けようとするのはわかる。だが、日本には世界的な競争力を有する産業も、また世界から観光客を呼び込む資源も豊富なのである。

ギャンブルに関心のない人にとっては、カジノ解禁など遠い世界の出来事に映ることだろう。しかし筆者には、日本が将来、どのような国をつくるのかという覚悟が問われているように思える。ハゲタカ外資に札束を積まれ、法律まで変えて日本のギャンブル市場を売り渡す。そして「おこぼれ」にあずかろうと、ハイエナのように群がるパチンコ業界……。安倍首相のモットーは「美しい国」づくりだったはずだが、カジノ解禁には美しさの欠片もない。いつから日本は、博打に未来を託すような国に成り下がったのだろうか。

出井康博(いでい・やすひろ)
ジャーナリスト
1965年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。英字紙『The Nikkei Weekly』の記者を経て独立。著書に、『ルポ ニッポン絶望工場』(講談社)『松下政経塾とは何か』『長寿大国の虚構―外国人介護士の現場を追う―』(共に新潮社)『年金夫婦の海外移住』(小学館)などがある。

参照元 : プレジデントオンライン







2018年3月14日水曜日

【朗報】パチンコ店の倒産が3年ぶりに前年上回る

パチンコホールに再び“厳冬” 4年ぶり大型倒産 新規制導入で客離散におびえる業界

2018.2.3 16:07



2017年(1~12月)のパチンコホール倒産(負債1000万円以上)は29件(前年比141.6%増)で、3年ぶりに前年を上回った。負債総額は291億9500万円(同67.6%増)で2年連続で増加、4年ぶりに負債100億円超の大型倒産も発生した。(東京商工リサーチ特別レポート)

出玉規制で射幸性を抑えた「パチスロ5号機問題」が落ち着いた2009年以降、倒産は減少した。だが、パチンコ出玉の上限を今までの約3分の2に抑える改正風俗営業法施行規則が適用される今年2月を前に、再び増加に転じた。

減少する遊技客の奪い合いで中小ホールの経営は厳しさを増し、資金力のある大手ホールが新規出店や買収で攻勢をかけている。ギャンブル依存症への対策を狙う2月の規制強化が、今後の客足にどう変化を及ぼすか注目される。

◆倒産が3年ぶりに前年上回る

2017年のパチンコホール倒産は29件(前年比141.6%増)で、前年の2.4倍増と急増した。倒産が前年を上回ったのは3年ぶり。5号機問題の影響で倒産が144件とピークに達した2007年以降、2014年を除き前年を下回っていたが、2017年は大幅増に転じた。

負債総額は291億9500万円(同67.6%増)と、2年連続で前年を上回った。4年ぶりに負債100億円超の大型倒産が発生、負債総額を押し上げた。

2017年のパチンコホールの休廃業・解散は41件だった。前年より8件減少(前年比16.3%減)し、3年ぶりに前年を下回った。休廃業・解散は2008年の86件をピークに、2012年以降は50件未満の推移が続いている。

パチンコホールは、店舗への投資負担が大きく、店舗の環境次第で大手業者が新規出店より既存店の買収に動くケースもあり、休廃業・解散を後押しする環境も出来ているようだ。

◆負債額別、10億円以上が前年比50%増加

負債額別では、負債1億円以上5億円未満が15件(前年比400.0%増、前年3件)で5倍増と急増、構成比も半数(51.7%)を占めた。また、4年ぶりに発生した同100億円以上の1件を含む同10億円以上も6件(前年比50.0%増)と大幅に増えた。

ただ、同1千万円以上5千万円未満も5件(前年ゼロ)と増加し、中堅規模の倒産が目立つ一方で、小規模ホールの倒産もジワジワと増えている。

原因別では、「販売不振」が19件(前年比171.4%)と2.7倍増で、構成比も65.5%を占めた。次いで、グループ企業に連鎖した「他社倒産の余波」が5件(前年ゼロ)、店舗や機器の投資負担から資金繰りに窮した「過小資本(運転資金の欠乏)」が3件(前年ゼロ)発生した。

◆主な倒産事例

(株)ゲンダイ(岡山県)は、ゲンダイグループの中核企業で、2006年には岡山県から関西地方に13店舗を展開、グループ売上高は約650億円を上げていた。だが、規制強化と市場縮小のなかで同業者との競合から業績が悪化。新規出店の資金負担も重く、遊技機器入替の決済資金を調達できずグループ2社(岡山、大阪)と同時に2017年1月、大阪地裁に民事再生法の適用を申請した。

新栄商事(有)(群馬県)は、4店舗を展開し一時は年商60億円台を維持していた。近年は遊技人口の減少や大手同業との競合で業績の低迷が続いていたが、2018年2月の出玉規制を見越して事業継続を断念。2017年9月、前橋地裁で破産開始決定を受けた。



◆出玉規制が再編の引き金に?

パチンコ業界は、2018年2月から出玉上限を2400個から1500個に抑える出玉規制を柱とする改正風俗営業法の施行規則が適用される。経過措置により検定を通過した現行機は最長3年間の稼働が可能で、完全入替は2021年になる見込みだが、パチンコ依存症対策を目的とする本改正は遊技人口の減少に拍車をかけると危惧されている。

これまでもパチンコ・パチスロの規制強化はパチンコホールの淘汰につながった経緯がある。特に、2004年の「パチスロ5号機問題」による客離れと機器入替負担で、2007年の倒産は144件と過去最多を記録した。

2004年の「5号機問題」と同様に、この2月の出玉規制も客離れを招くか注目される。また、市場が縮小する中で規制をクリアした新機種への入替負担が、中小パチンコホールの経営に及ぼす影響を見極めることも必要だろう。

業界のパチンコ依存症への対応は立ち遅れ感も否めず、風営法改正で従来の営業をどう変えていくか、経営のかじ取りが重要になってくる。

今後、パチンコ業界は大手と中小の市場二分化に加え、倒産や休廃業、店舗切り売りやM&Aなど、様々な動きが出てくると予想される。

参照元 : sankeibiz